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突然ですが

没SSを投下。
今何話をプレイしてるのかよくわかる話です





目を覚ませば昼休みだった。腹が減ったなとは思うが、同じくらい動くのは億劫だとも思っている。
何度か寝返りを打って誤魔化してみるがやはり空腹感は無視できない。
皆守は葉佩に『カレーパンを食したい旨』のメールを送る。
九月の転校生にはなんでも懐に入れる性癖があることを知ったのは今朝のことだ。
あいつならばすでに持っていてもおかしくない、という期待はあったが、
メール送信からわずか数十秒後という奇跡的な速さで保健室の扉がスパンッと開かれ、
「はいっ、皆守!カレーパンッ」
と威勢のいい声が響いたことには流石に驚いた。
どんな大手のデリバリーショップでも対抗できない仕事の早さだった。
予めこうなることを知っていた、タイムリープしてきた未来人さながらだ。
「……早かったな」
「まあな」
葉佩は自慢げでも得意げでもなく、ごくごく普通に肯定した。やけに男らしい。
「ありがとうな、葉佩。やっぱり昼はカレーパンだよな。
 そういや、カレーパンの歴史は意外に新しくてな――昭和2年、東京の下町のパン屋が
 実用新案登録して世に出したもので、当初は「洋食パン」という名前で――」
「そんなことより!」
薀蓄披露に火がつき始めた皆守の話の導火線を、葉佩は断ち切る。
差し出そうとしていたカレーパンの袋を、皆守からかばうように腕を真上に降り上げた。
「出せよ、マニア垂涎のお宝っ。じゃなきゃこれは俺が食う」
「――ああ」
話を遮られムッとしつつも、皆守は自分が打ったメールの内容を思い出していた。
マニア垂涎のお宝をやってもいい、と唆したんだった。
「嬉しすぎて泣くなよ?ほら」
と、保健室のベッドの下に置きっぱなしにしていたカレー鍋を取り出して渡す。
時折家庭科室を借りて勝手にカレーを作ったりしているので、その時用のものだ。
当然笑顔になると信じていた葉佩の表情が曇ったことに訝る。
「おい、どうしたトレジャーハンター。粘土ゲットしても喜ぶくせに、なんだその顔は。
 俺のカレー鍋が受け取れないとでも言うのか?全面多層構造で、熱効率抜群なんだぞこの鍋は」
「……いや、だってさあ、皆守」
しぶしぶ、といった動作で鍋を受け取りつつ、葉佩は皆守にカレーパンを手渡す。
「貧しき少女だって報酬にお宝写真をくれるっていうのに。……マニア垂涎のお宝、なんて言われたら
 皆守の小・中学時代の写真かなあって期待するのが普通だろ?」
「何の話かよくわからんが、なんで俺の昔の写真がマニア垂涎のお宝になるんだよ」
「皆守マニアの俺が涎を垂らして悦ぶからだよ」
「ほんと馬鹿だな、お前」
皆守は、はあーと長い長い溜息を吐く。
「お前がそんなノリなのは慣れてきたがな、他の奴が訊いたら真性だと思うぞ」
「真性って何が?あ、言っとくけど、お前の写真を変なことに使ったりしないからな?」
「もー黙れお前。そこまでいくと、朱堂の境地だぞ」
「朱堂って誰?」
キョトンとしている葉佩に、皆守は「ああそうか」とつぶやく。
なんだか気がつけばいつも、するりと自分の横に立っている葉佩が
転入してきたのは実はつい最近なのだと忘れがちになっている。
「いくら朱堂が有名人だからって、転校生じゃ知らないよな。まあ、なんつうか……」
説明できる言葉を探すが、すぐに探していることが面倒になる。
そういえば、他人に無頓着な自分の耳にも入ってくるほどの有名人だが、
顔を見たことがないことも思い出し、余計に伝えるのは億劫だ。
「要するに、かわった奴だ」
説明を放棄し、ビニールを破ってカレーパンを取り出す。
冷えても美味い上に揚げパンにも合う。カレーの万能さを再度確かめながら口に運ぶ。
確かめる度に美味しくなっている気がする。
「ぜんっぜん、わかんねえけど」
「会えば分かるさ」
俺は会いたくないがな、とげんなりと言い放つ。
けれど、葉佩とは気が合いそうだとも思い、余計にうんざりとする。


そんな話題をしたせいかは兎も角、二人はそれからきっかり7時間後、
未知との遭遇を果たすことになった。

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